高校生&大学生による_タカラバイオ株式会社様への会社取材No.20

陣内友子さん（市立札幌開成中等教育学校_5年生）

市立札幌開成中等教育学校の高校生レポーターです。

取材した経緯

私はDNAの存在を授業で知り、DNA（デオキシリボ核酸）は、生命の設計図でありながら、分子としても非常に美しい存在であることに大きな魅力を感じました。
また、DNAの一部分のみを増幅するための技術であるPCRは革新的な技術であり、様々な分野で活躍することができるすばらしい技術です！
遺伝子治療は、がん、遺伝性疾患、感染症など、さまざまな病気の治療法として研究開発が進められています。
今回は遺伝子治療やバイオ技術などを扱っている会社であるタカラバイオさんにPCRについてのお話を伺いました。

タカラバイオさんについて

タカラバイオさんはもともとお酒を取り扱う会社の新規事業としてスタートした。
PCR法が発明されたのは、1970年〜1980年で、タカラバイオさんは1979年に国産初の遺伝子工学研究用の試薬・制限酵素を発売しました。
また、1988年にはPCR法による遺伝子増幅システムの国内独占販売権を獲得したそうです。
ライフサイエンス産業のインフラを担う企業、バイオ関連の会社を支援する企業としてバイオ業界で活躍されています。

PCRの原理

STEP1：二本鎖を94℃から98℃に加熱することで水素結合を切断し、一本鎖にします
STEP2：それぞれの一本鎖にPCRプライマーを結合させます
一般的にプライマーは20〜30塩基の長さからなる1本鎖の合成DNAで、ゆっくりと55℃～65℃に温度を下げることでプライマーがターゲット配列に特異的に結合します
STEP3：PCR酵素はプライマー結合部位に取り付いて、それぞれの一本鎖をの塩基配列をもとに二本鎖（相補鎖）を合成します。
STEP4：STEP1〜3（1サイクル）を繰り返し、2のn乗倍に倍増していきます

このようにPCRを使って、わずか数分子の遺伝子の特定領域を数時間で100万倍以上に増幅することができます。
遺伝子情報を解析することで生物の生理機能等を知ることができますが、微量なDNAやRNAでは困難であるためPCRを使って増幅することで解析可能になります。
PCRで増幅したあとは、電気泳動で寒天の網（分子ふるい）を通して分離した遺伝子の検出を行ったり、次世代シーケンサーで遺伝子の情報を解読したり、大腸菌や培養細胞などに取り込んで医薬品の製造などにも使われます。

PCR技術の応用

分子生物学、臨床診断、食品・環境検査、犯罪捜査、考古学、体質検査、親子鑑定など幅広い場面に応用されている。なぜならPCRには3つの利点があるからです。
①特異的な検出ができる。様々な遺伝子が混在する中から特定の目的遺伝子のみ検出することができます
②迅速かつ客観的な判断力。食中毒菌の培養＆染色検査では３日かかり、判断には経験が必要ですが、PCR法では1〜2時間で容易に判断を下すことができます。
③高い検出感度。例えばノロウイルスの検出において、PCR法では牡蠣１グラム中に10個以上含まれていれば検出することができますが、従来法では100000個以上含まれていないと検出できない。
これらの利点があり、様々な場面で応用され利用されています。


ご提供：タカラバイオ株式会社様

PCR法の定量化＿リアルタイムPCR

PCR産物が1 サイクルごとに DNA が 2倍、2倍、・・と指数関数的に増幅する。
その様子をリアルタイムに測定することで、目的遺伝子の増幅量をリアルタイムに検出し、一定量に到達するサイクル数（Ct値）から遺伝子量を定量できる。
この増幅の様子をリアルタイムモニタリングした図が増幅曲線である。
感染症検査、食中毒検査、下水疫学調査、衛生指標菌調査、水質調査などの遺伝子調査キットに活かされている

取材してみて

PCRの基礎部分の知識はあったものの、それがどのように活用されているのか、どういう発展を遂げてきたのか、どういう歴史があったのかなどを知ることができていい機会になりました。
また、タカラバイオさんがどのようにPCRを活用しているのか、どのようにしてライフサイエンスのインフラを支えているのか、直接伺うことができてよかったです。

引用文献
タカラバイオ株式会社 (n.d.). 3分でわかるタカラバイオ. Retrieved August, 13, 2025,
from https://www.takara-bio.co.jp/ja/ir/about.html