高校生&大学生による_クラシエ株式会社様への会社取材No.8

2024年03月29日(金)

宇野百華さん(市立札幌開成中等教育学校_6年生)

こんにちは!高分子未来塾の高校生レポーターで、市立札幌開成中等教育学校6年の宇野百華です!
皆さんは知育菓子®というものを知っていますか??
知育菓子®は子どもたちの好奇心・創造力を高め、科学への興味を育むお菓子として、クラシエ株式会社さんが始めたものです。
さらに2021年、一人ひとりの自信を育むお菓子へと進化し、「生きる力を育成する」ためのお菓子として生まれ変わりました。
代表的な知育菓子®としては皆さんご存知の「ねるねるねるね」が挙げられます!
今の知育菓子®のコンセプトは個性を伸ばす、失敗を楽しむ、違いを尊重するという3つの価値を提供することです。
このように進化してきた知育菓子®について、クラシエ株式会社さんに取材させていただきました!
  


そもそも知育菓子®は、粉末飲料の技術をもとに「子ども向けにできないか」という点から発達し、色や形の変化や動きのある、作る楽しさを付加した「子ども粉末」として誕生しました。そのため今でも粉末ベースの技術が多くなっているそうです。
お菓子の性質としては粉末以外にも焼き菓子やチョコレートやマシュマロ、キャンディなどを組み合わせて制作しています。様々な点から子どもの好奇心を刺激しているんですね!

知育菓子®の反応原理

知育菓子®は発泡、粒ゼリー化、色変わりの3点を軸に開発されています!
実際それぞれはどのようなものなのでしょうか?
以下で1つずつお話ししていきます。

発泡
使用されている反応は以下の通りとなっています。
 


重曹とクエン酸による反応図
 
この反応で生成された二酸化炭素がねるねるねるねなどを膨らませているそうです!

粒ゼリー化
アルギン酸ナトリウムとカルシウムによる架橋を利用しています。
アルギン酸ナトリウムは海藻から抽出される増粘多糖類です。
マンヌロン酸(M)とグルロン酸(G)から構成されるポリマーで、特徴としてはカルシウムイオンと反応して架橋が起こり、ゲル化してその中に水を取り込むことがあげられます。


 マンヌロン酸とグルロン酸


 ゲル化することで中に水を取り込んだ様子
  


アルギン酸溶液とCaイオンの反応の様子
 
この反応はとても速いので、カルシウム溶液にアルギン酸溶液を滴下すると、中が液体のまま表面だけがアルギン酸ゲルになります。
これを利用した「どどっとつぶぴょん!」という製品ではイクラのようなものができるんですね。
玉の大きさや配合によって「つかめる実験!ふしぎ玉」にも応用が効くそうです。
この技術をもとに他の知育菓子®も考案できる可能性があり、子供の好奇心を揺さぶる、興味深い反応です!
     


粒ゼリー化を用いた知育菓子®
 

色変わり
アントシアニン色素の性質で酸性や塩基性で色が変わることを利用しているそうです。
アントシアニンは他の植物色素と異なり、連続的に幅広い色を示します。
これはアントシアニンの発色団である母核アントシアニジンの構造がpHに応じて変化することで起こるそうです。
利用されているものの例としてはねるねるねるねがあげられます!
ねるねるねるねの①の粉はアルカリ性であり水と混ぜた青色の溶液が、クエン酸の入った②の粉を入れることでpHの変化により赤色になるそうです。


 
アントシアニンのpH変化による構造変化とねるねるねるねの関係
 
知育菓子®の開発では様々な化学反応を試したいと考えているそうですが、「美味しい」を考慮しつつ、食品としての安全性や機能を保証したうえで楽しんでもらえる開発に努めているそうです。
おいしさを維持できる範囲の中で、ここまで興味深い知育菓子®を開発しているクラシエ株式会社さんの素晴らしさが伝わってきますね!
 

直接的な高分子との関わり

デンプン:ブドウ糖が多数結合したもの
物性調整、食感改良、生産適性向上、歩留まり向上など、様々な用途があります。
知育菓子®における使用目的はおいしさを決める因子としての、食感をコントロールするのに用いたり、生地の骨格になります。
以下の商品で使用されるソース、クリームなど粘度があるものの物性調整やレンジで作る生地においては、小麦の代わりにデンプンが使用されています。


  デンプンの物性を利用した知育菓子®

また、デンプンの物性は由来原料によって大きく異なります。
下のグラフや写真ではアミロースとアミロペクチンの比率における物性の変化を表しています。
このように比率が変化することで異なる物性を表すため、使用用途に合わせてデンプンを使い分けています。
 


由来原料別デンプンにおける流動性、膨張性の比較

α化デンプン
α化とはデンプンと水を加熱することで、デンプン分子が規則性を失い、糊状になることです。
身近な例で言うと炊き立てのご飯が挙げられます。
この状態がまさにα化の状態です。
デンプンには他にもβ化デンプン、生デンプンがあります。


 α化デンプンの生成

リン酸架橋でんぷん
デンプンをトリメタリン酸ナトリウムでエステル化して得られるもので、デンプンの水酸基が架橋して、耐熱性・耐酸性があるものになります。
つまり、加工によって無加工のα化澱粉にはない物性をもたらすことができます!  
 
 


デンプンの加工の種類と、リン酸架橋デンプンの概要
 
このようにデンプンの由来原料や加工方法の違いによって商品に適した物性を利用して商品開発をしているそうです。

増粘多糖類:高い粘性を持ち、複数の糖からなる水溶性の多糖類であり、水に粘り気を出したり、ゼリー化させる機能があります。
使用目的としてはデンプンと同じく、食感をコントロールするために使用されています。例えば歯ごたえや舌触り、口当たり、なめらかさなどが挙げられます。以下の商品などのソース、クリーム、ゼリーなどの粘度があるものやゲルの物性調整が挙げられます。


  増粘多糖類の物性を利用した知育菓子®
 

知育菓子®でよく使われる増粘多糖類はセルロース・デンプン、アルギン酸、アラビアガム、ローカストビーンガム、グアガム、キサンタンガムです。
これらは構造によって粘度や流動の仕方が異なるため目的に合わせて使用しています。
知育菓子®で頻繁に使用されているのはアルギン酸ナトリウムですが、なぜ頻繁に使われるのでしょうか?
理由として挙げられるのは、他のものとは違い常温で溶解できるという性質です!常温で溶解できるということは、子どもに対して火傷などのリスクをおわせない、安全な製品の提供につながります。
カルシウムと反応してゲル化すると言った特徴もふまえるとアルギン酸ナトリウムは知育菓子®に適した増粘剤ですね!
ちなみに、今回は取り上げませんでしたが、知育菓子®のトレー容器ももちろん高分子でできていて、耐熱用途にはポリプロピレンを、お菓子で細かな型取りを行う際にはポリスチレンを用いるなど、用途によって高分子の種類を変えています!

さいごに

ここまで記事を読んでくださり、ありがとうございました!
お話しした知育菓子®の原理ですが、それぞれのお菓子のパッケージに簡易的に記載されているのを皆さんはご存知だったでしょうか?
疑問を疑問で終わらせないのが子どもたちの好奇心に寄り添っていることがとても伝わってきます。
ぜひ気になる人は実際に確認してみてください!
新たな発見があると思います!
 
最後に、今回の取材を受けて下さったクラシエ株式会社の吉田さん、宮部さん、大谷さん、石牧さん、有賀さん、サポートして下さった野々山先生、中島さん、大変貴重な機会を提供していただき、本当にありがとうございました!


 
取材先:クラシエ株式会社
取材日:2024年3月29日(金)
 

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