高校生&大学生による_Spiber株式会社様への会社取材No.4

2022年10月21日(金)

高田 茜さん(高槻高等学校_1年生)

8月18日に山形県鶴岡市にあるSpiber株式会社(以下Spiber)さんにオンラインで取材をさせていただきましたので、紹介させていただきます。


Spiberさんはタンパク質を素材として、色々な製品を作られています。
「どうやったら社会の持続可能性を向上させられるのか」という考えから、石油由来ではない、かつ自然環境下で分解性を持つタンパク質に目をつけました。
タンパク質は素材として、とても硬い、構造の種類が豊富、環境に優しい、設計した通りに分子が合成できるなどたくさんの強みがあります。

生き物たちもこのタンパク質をいろいろな形で使っていますし、私たち人間は昔からその天然素材を活用しています。
どういうかたちで使っているのでしょうか?
身近なものでは、羊毛、絹、羽毛などは衣服や布団などに、革素材は靴や鞄などに使われています。
また、蜘蛛の糸にはFibroin(フィブロイン)というタンパク質が使われています。
Spiberさんはこの蜘蛛のFibroinに着目して研究を始められました。

ではタンパク質をどうやって研究開発していくのでしょうか?
まず蜘蛛の糸のような生き物たちが実際に使っている優れたタンパク質の構造を分析し、そしてその情報を蓄積します。
 


図1 天然の優れたタンパク質を人工的に開発し生産する流れ

そこからどういったタンパク質を作るかをコンピュータでデザインし、その設計を元にDNAを合成します。生物の中でタンパク質は、設計図となるDNAを元に合成されます。設計したDNAを微生物に導入し、その微生物の中でタンパク質を作らせ、最終的にタンパク質だけを取り出し、繊維などの材料にしていきます。
得られたタンパク質から作った材料を分析し評価して、また情報を蓄積しています。



図2 設計、生産、評価、フィードバックの材料設計サイクル

これらの過程には、バイオインフォマティクスや遺伝子工学、分子生物学、発酵工学、有機化学、高分子化学、材料工学など、様々な分野の専門家の方々が関わっており、自社で分野横断的に一気通貫した開発体制を有し、目的のタンパク質を作り出しています。
しかし、これらの天然のタンパク質は水に溶けやすく、素材としては使いにくい性質があります。
そこで現在Spiberさんは、天然のタンパク質を単に模倣するのではなく、そこからヒントを得ながらもより各種ニーズに適した素材を提供するべく、「Brewed Protein™️(ブリュードプロテイン™️)」という名前の人工構造タンパク質素材の研究開発を行なっています。
先程の分子設計のサイクルを繰り返して最適化することで、課題も解決していき、産業的にも応用可能な素材を作り出すことに成功しました。現在、アパレル製品への採用が進められています。

衣服だけでなく、その長所を生かして工業材料としての研究開発も行なっています。
下の写真はエネルギー吸収性を生かした車の部品への利用の例です。
 


図3 車載部品への応用例(プロトタイプ)
Source: ImPACT または  画像提供: ImPACT

また日本だけでなく海外にも工場を作り、タンパク質の量産に向けて準備を進めています。今年春にはタイのプラントが稼働を始め、順次生産量を拡大させていき、来年以降にはアメリカにもプラントを立ち上げる予定です。




図4 生産拠点の様子(上:鶴岡本社の発酵培養設備,
下:タイに建設した大規模発酵・精製プラント(左)とオフィス(右))

Spiberさんはこのようなタンパク質の開発、利用によって、環境への負荷を可能な限り低減し得る循環型社会を目指しています。

次に質問させていただいたことについて紹介します。

Q1. Brewed Protein素材にデメリットや課題は? 
A1. 採用いただいている企業やブランドの基準を満たしているものの、環境分解速度が大きいので耐久性に課題がある部分もある。今後いかに高めていけるかがより多様な用途、製品へ活用いただくためにも重要。
現時点では生産量/規模に限りがあるため生産コストが高い。


Q2. タンパク質の設計において、高次構造も考えるの?
A2. 体内以外で使われるタンパク質についてのデータベースが少なく、複雑で分かっていない点も多いが、アカデミアとも連携しながら配列情報やモチーフと、物性の相関などの解析といった基礎研究も進めており、可能な限りアミノ酸の配列だけでなく高次構造についても考える。

Q3. 既存のタンパク質繊維との違いは?
A3. 
・工業プロセスにより安定供給ができる。
・温室効果ガスの排出量が少ない。
補足:タイのプラントを再生可能エネルギーを100%使用してフルキャパシティで稼働させた場合、我々の繊維の生産で排出される繊維重量あたりの温室効果ガスの排出重量は、カシミヤの繊維生産に係るその排出重量と比較しておよそ4分の1程度にまで削減できる試算です。
・自由度の高い分子設計性により、顧客ニーズに合わせて任意の特性を付け加えることができる。
・中長期的には、一般的なタンパク質繊維と比較して製造コストが抑えられる。
  

今回たくさんのことを学び、貴重な体験をさせて頂きました。
☆取材を受けて下さったSpiberの皆さん、サポートして下さった野々山先生、ガリポン先生、中島さん本当にありがとうございました☆
 
取材先:Spiber株式会社
取材日:2022年8月18日(木)
 

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