高校生&大学生による_株式会社パイロットコーポレーション様への会社取材No.18

2025年08月08日(金)

沼下歩生さん(遺愛女子高等学校_3年生)

 今回、私たちの最も身近に感じられる文房具について調べました。
文房具は学生の味方でもあると感じているので、今回は貴重な経験をさせていただきました。

消せるボールペン『フリクション』の開発には50年の歴史

ある研究者が一夜にして変わる紅葉からインスピレーションを受け、
この魔法のような変化をビーカーの中でも再現したい
と思ったのがフリクション開発の原点となっている。

1975年
温度変化で色が変わるメタモインキの開発に成功し、特許を取得。
メタモインキを発明していらい様々なものに応用してきた歴史がある。
1988年
メタモインキは温度で色を変えることができる一方で、色がすぐに元に戻ってしまう難点があったが、変わった色を維持できるメモリータイプのメタモインキを発明したことによって、変化した色を室温で保てるようになった。
2001年
本格的にメタモインキを使った筆記具の研究開発に本格的に着手、2005年フリクションが完成した。
2006年
ヨーロッパで消せるボールペン「フリクションボール」を先行発売
2007年
日本で発売
※メタモインキ⋯温度によって色が変わるインキ

上記の説明よりさらに詳しい歴史







資料提供:PILOTコーポレーション様
 

Q&A

Q、どうしてヨーロッパからフリクションボールを先行発売したのか
A、ヨーロッパ特にフランスでは、青の万年筆で文字を書き、間違いを修正する際、消去用のペン(化学的薬液)を付けて消すという文化があった。(日本での暗記マーカーのようなもの)
しかし、化学的消去を用いているため書いた文字の上からもう一度、同じペンで書くことが出来ず、上書きするためにはさらに専用のペンが必要で、合計3本のペンが必要だった。
そののち、パイロットのフランス会社の担当者が、2002年に発売された、摩擦熱で黒の筆跡が赤や青に変わるボールペン「イリュージョン」をのように色から色ではなく、筆跡を有色から透明にして消し書きができるポールペンができるのではないかと発案。
商品化・発売販売したところ爆発的ヒットを記録した。

フリクションインキの仕組み

マイクロカプセルの中に入っている基本の3成分
A:発色剤(ロイコ染料)
B:「A:発色剤」を発色させる成分
C:変色温度調整剤→種類によりメタモインキの消える温度や色がつく温度を決めている。
Cの変色温度調整剤はPILOT様が色んな化合物をトライアンドエラーをして作り上げた企業秘密の工夫がされている!!


資料提供:PILOTコーポレーション様

このカプセルの大きさは!2~3㎛
髪の毛の太さの40分の1!?
ボールペンのペン先から出すためには、これぐらいの小ささにしなければならなかった!

さらに詳しいちょっとした説明

A(ロイコ染料)がBと結びつくことにより、Aの構造が変化する。
一例としてフルオランと呼ばれる構造の化合物がAに含まれている。
この分子の中にラクトン環と呼ばれる部分構造を持っており、これがBに含まれている酸の作用で切れることにより環が開き、分子の構造が変化することにより色が着色されるようになる。
これをCの変色温度調整剤が邪魔をすることで、Aのラクトン環を作り出し色が消える。
つまり、Aの構造が変化することにより、着色されたり消えたりすることができる!
それを熱でコントロールするために、Cの成分を加えている!

上記の構造変化を図で表した様子
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Fluorescein_pH_dependence.svgより

colored zwitterion form  colorless fluoran


Q&A

Q、マイクロカプセルに入れなくてはいけないのですか?
A、可逆的に変色させるためには、前記3成分を常に一定の比率に保つ必要があります。
3成分の比率が崩れたり、他の成分が混入すると、狙いの変色機能が発現できないため、カプセルに内包することで安定化、保護しています。

新製品の開発へのこだわり

1.機能面
世の中にない商品を出すことにより、使っている人に感動を与えたい。
2.品質
機能が良く、長く安定して使えるように工夫している。

PILOTコーポレーション様の成果

売上:2006年ヨーロッパで発売して以来、現在日本を含め100以上の国と地域でフリクションの販売が行われており、去年の年末時点で累計47億本(替芯含む)
日本でも海外でもフリクションが最も売れている!!

おわりに

今回お話を伺う中で、私たちの身近にある文房具がたくさんの工夫を凝らして私たちの手元にあるのだと思うと、私たちがこのように快適に勉強できるのはたくさんの人が協力して開発してくれているおかげだと思いました。
またお話を伺う中で、日本ではノック式が人気で海外ではキャップ式が人気だというお話を聞いて、日本と海外の文房具の文化の違いも学べてとても興味深かったです。
ありがとうございました!


 
取材先:株式会社パイロットコーポレーション
取材日:2025年8月8日(金)
 

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