高校生&大学生による_ペプチグロース株式会社様への会社取材No.9

2024年11月07日(木)

遺愛女子高等学校_2年生)

こんにちは!高分子未来塾の高校生レポーターで、遺愛女子高等学校に通っています。
「再生医療」、最近良く耳にするようになった言葉ですが、どのような仕組みで、どれくらい実用化が進んでいるのでしょうか?
今回は世界で唯一の「成長因子代替ペプチド合成」技術を持つペプチドリーム社と三菱商事株式会社の合弁会社、ペプチグロース株式会社さんに取材をさせていただきました。

再生医療とは?

組織や臓器に大きな損傷や機能不全が生じると、現実的には臓器移植による外科的な治療意外に選択肢がありません。
しかし移植治療には、免疫拒絶や提供される臓器の不足といった課題があります。そこで注目を集めるようになったのが再生医療です。
再生医療では、患者さん自身または提供者から採取した細胞を培養、成長因子により分化誘導して目的とする細胞・組織・臓器に加工して移植します。


 
他者からの臓器移植に頼る必要がなく、拒絶反応などの副作用も起こる可能性が低いです。
また、外科手術などに比べてからだへの負担がかからない上、従来の臓器移植と同等の効果を得ることが可能なので注目を集めています。

成長因子

成長因子とは細胞に増殖や分化を命令するタンパク質のことで、目的の細胞培養・組織形成の必須の物質です。
ヒトの体内には約100種類存在します。
細胞培養に用いる成長因子は、これまではウシ胎児血清から精製したり、組み換え遺伝子を導入した大腸菌などに作らせていた為、品質のバラつき、生物由来不純物の混入、低い熱安定性、高価格などが大きな問題となっていました。
特に価格の面では、成長因子は厳重な品質管理が必要であり、製造コストが非常に高く、再生医療用の組織形成に伴う原料コストの大部分を占めています。

成長因子代替ペプチド

ペプチグロース社さんでは従来の成長因子と同様の活性を持つペプチド「成長因子代替ペプチド」の開発を進めています。
これは完全に化学合成で製造され、従来の成長因子が持つたくさんの課題を解決しています。



成長因子代替ペプチドの基本骨格は、2つの環状ペプチドがリンカーで繋がった構造を持っています。
1つの環状ペプチドは10〜15個のアミノ酸(非天然アミノ酸を含む)からなり、二量体化した全体では20〜30個からなり、比較的小さい分子構造を持っています。
この設計された成長因子代替ペプチドの生物活性機構を図に示します。
細胞の表面は、受容体と呼ばれる成長因子と結合してシグナルを受け取る器官が存在します。
受容体は、シグナルを受け取っていない場合は孤立した状態で細胞膜表面に存在しますが、成長因子はその受容体を近づけて二量化(ダイマー化)させる作用を示し、これによって細胞内にシグナルが伝達されます。
このとき、受容体表面の分子構造と二量化した際の受容体の間隔が、成長因子の認識に重要です。
受容体の分子構造を認識する部位は、環状ペプチドのアミノ酸配列によって設計し、受容体の間隔は環状ペプチドを繋ぐリンカーの長さを調整することで、複雑な成長因子の構造を粗視化しても同様に機能します。
この構造は非常に理にかなっており、例えばc-Metアゴニストの作用を示す成長因子HGFの代替ペプチドは、HGFに比べて1/16の濃度で同様の活性を示します。



完全化学合成をすることによって原料の大幅なコストダウンを期待でき再生医療の普及に繋がると考えられます。
現在は、数十種類の成長因子やサイトカインの代替ペプチドの開発を進めているだけでなく、この技術を用いて培養肉へ成長因子代替ペプチドを応用することも可能です。



最後に、取材を受けてくださったペプチグロース株式会社の杉本さん、牛丸さん、サポートしてくださった野々山先生、中島さん、大変貴重な機会を有難うございました。
 
取材先:ペプチグロース株式会社
取材日:2024年8月21日(水)
 

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