第37期会長に就任して

裾野が広くて頂の高い、それでいて、面白くて、役に立つ高分子学会をめざして

 

 このたび公益社団法人高分子学会の第37期会長を仰せつかりました。誠に光栄なことであると同時に、多様・多難な時代背景の中で、身の引き締まる思いと責任の大きさを実感しております。コロナ禍の間に、少なからず世の中のさまざまが変わりました。その洗礼を受けた今、未来のための高分子学会をめざし、各方面で、さまざまな取り組みを始めようとしています。

第37期 高分子学会 会長
西野 孝

 
 

次世代人材、グローバル人材の参画

 近年、多くの学協会で会員数・収益が減少し、ダメージを受けてきました。高分子学会もご多分に漏れず、の傾向にありましたが、伊藤前会長までの歴代執行部の皆様、事務局のご尽力もあって、お陰様で明るい兆しが見えてまいりました。これを一時的な現象に留めないためにも、世界をけん引してきた日本の高分子の学術研究、産業分野を飛躍させるためにも、よりいっそうのグローバル化が必須です。国際会議、諸外国の高分子関連学会・協会との連携の組織的な強化、国内の異分野の学協会との交流の活発化を図ります。
 また、元来、グローバル化には世界規模というだけではなく、分野横断の多様性の意味合いが含まれます。とくに、産官学のバランス、年代構成などの裾野分布が広い高分子学会では、多様性の質的・量的拡大が今後の進化・深化のために重要になります。次世代人材の高分子学会への参画が緊急の重要課題となる中、まず、望まれる姿のサーチと抽出を進め、果敢な試行錯誤も辞さない覚悟をもって新たな企画に取り組んでまいります。

 
 

戦略的企画運営

 知識・知見を得るための場としてのオンラインのメリットを活かすべく、来年度の年次大会をweb化する試みが始まります。その一方で、新たな出会いとこれまでの絆の深化、議論の場としてのオンサイトの重要性も改めて認識できました。対面でのポスターセッションや懇親会をそのままwebで実施することには大きな困難をともないました。したがって、単にwebか対面かという運営方式だけに留まらず、三大行事を含め、さまざまな事業について本部/支部/事務局の連携体制のもと戦略的に、企画、運営を含め、新たな視点で中長期のスパンで見直す好機ととらえたいと考えています。

 
 

環境と高分子

 環境調和、地球温暖化が大きな課題となる今日、持続的で豊かな未来社会創造に貢献する上で、高分子科学・産業は一義的に重要度を増しています。さらに直近の問題としてELV指令に対処を行う上でも、本邦発の高分子研究と技術が課題の解決に多大な寄与を成してきたこと、これからも成し得ること、成さなければならないことを、よりいっそう、グローカルに情報発信することをめざします。
 また、世間の一部風潮が高分子悪者説に傾く中、誤解解消や正確な知識普及の役割が求められます。それらのために会誌、ホームページ、PJ 誌、高分子未来塾®の充実に加え、さまざまな機会・媒体を通じて丁寧な説明を繰り返し進めます。
 
 

未来のために

 産官学で高分子にかかわる作る側も使う側の皆様も、大学生、院生も、小中高生も参加いただいての高分子学会です。能動的に参加していただいて、そして満足いただける内容と雰囲気をよりいっそう醸し出すことが重要です。
 とっても魅力があって、いろいろと面白くて、役に立つし、沢山の方に集っていただける、裾野が広く、頂の高い、そういう高分子学会を全力でめざしていく所存です。
 そのためには、会員の皆様はもちろん、支部、研究会、そして事務局や高分子同友会の皆様のご協力、ご支援が不可欠です。何卒よろしくご指導、ご鞭撻のほどお願い申し上げます。

 
西野 孝 / Takashi NISHINO
神戸大学大学院工学研究科応用化学専攻
[657-8501]神戸市灘区六甲台町1-1
教授,工学博士.
専門は高分子物性(力学,表面・界面),高分子構造.

1984年神戸大学大学院工学研究科修士課程修了,神戸大学工学部助手,助教授を経て,2004年教授.2007年より組織改編により現職.